忍者ブログ

現実世界と文学と

ここでは私が興味を持った小説を邪推して裏を読んでその考察をしていきたいと思います。

『井上ひさし』ナインと中流4

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

コメント

ただいまコメントを受けつけておりません。

『井上ひさし』ナインと中流4

○外野の経営者
 内野は労働者とすると、外野は?
外野の三人(作中に出てくるのは右翼と左翼の二人だけだが)は誰かを雇ってお金を稼いでいる人、自営業者だとは考えられないだろうか。


左翼 常雄 

自動車学校経営

右翼 誠   

小料理屋

中堅      

不明


 左翼と右翼にはそれぞれ革新的、保守的という意味がある。
野球場が国会議事堂の暗喩だとすれば、これも意味を含んでいる可能性がある。
常雄は自動車学校経営経営。自動車と経営、どちらも革新的なイメージがある。

対する誠は新道の近くで小料理屋。
小料理というのがどことなく家庭的で保守的なイメージである。
また、新道の近くで働いているというのも、同じ印象を受ける。

つまり外野の三人はそれぞれの思想の象徴ではないか、という推論が立てられる。
すると、明記されていない中堅とは、保守と革新の狭間にあるものではないか。

 それは日本の中流意識の象徴なのではないかと私は思う。
十数年前は確固として存在していたものだが、現在は消えてしまっているものだ。
だから中村さん、英夫くんの話の中で名前が出なかったのではないだろうか。

 そしてその中流意識こそが、日本という国を束ねていたものであり、
まさに日本の中堅であったと井上ひさしさんは言いたかったのではないか。

 右翼、左翼、中流意識、経営者と労働者。それらのものが一体となったからこそ、
強い日差しから労働者(英夫)や弱虫(常雄)を守ることができた。
必ずしも一位(優勝)ではないものの、第二位(準優勝)になることができたという含みがあるのではないだろうか。
にほんブログ村 本ブログへ
PR

コメント

プロフィール

HN:
殻勝五十鈴
性別:
非公開

P R

忍者カウンター